12月8日(月)、
一般社団法人シルバーサービス振興会主催による、
第324回月例研究会があり、参加してきました
【第324回 月例研究会】 12月8日(月)開催
● テーマ : 「介護・医療施設を取り巻く環境と経営状況について」
● 講 師 : 緒方 武虎 氏
独立行政法人福祉医療機構経営サポートセンター リサーチグループ
● 日 時 : 令和7年12月8日(月) 14:00~16:00(13:40より入室受付)
● 場 所 : TKP秋葉原カンファレンスセンター【カンファレンスルーム3A】

以下受講メモ
1、介護医療業界を取り巻く経営環境の変化
現状と将来は?
・想定より15年早い少子化
・地方は2040年以前にピーク、都市部は以降にピーク
・2040年に向けて医療介護の複合ニーズを持つ高齢者が増える
供給や課題は?
・認可のいらないサ高住が急激に増えている
・職員不足現在22万人→2040年57万人
・2020年と比較した物価指数は109に増えている
・建築費も2010年と比較して248千円→448千円に
・ユニット型特養建築費も2010年の199千円→387千円に
・定員一人あたりの面積を減らして対応するしかない
・最低賃金見直しに伴い85%が賃上げ
将来は?
・2020年代に1500円を目指すなら、15%は廃業になる
・医療:提供体制全体の課題解決、新たな地域医療構想等の改革が必要
・福祉:地域軸時間軸を踏まえたサービス提供体制の確保
2、地域軸の視点
・先世代型社会保障の構築に向けて時間軸の視点、地域軸の視点で取り組む
・増え続ける、ピークアウトが見込まれる、減少しているの傾向に分けられる
・地域の例:横浜市は伸び続け、横須賀市は減少する、人材の確保が困難になる
3、介護・医療施設の経営状況
サービス活動収益は?
・減少傾向、光熱費軽減で利益率向上している
・速報値:ユニット型は5.1%(+0.2%)、従来型は1%(-0.6%)赤字45.2%
・入所率/待機者数は減少傾向、待機者数は2013年から半減
・人件費は増えているが従事者数は減少している
・規模が大きいほど安定した収益を確保できている
通所介護は?
・地域密着型は安定しているが他は減少している
・40%以上は赤字
訪問介護は?
・月の訪問回数:社福は626回、営利は1457回
・人件費率:社福は85%、営利は59%
・サービス活動増減差額比率:社福は4.3%、営利は9.0%
認知症高齢者GH
・利用率は減少傾向
小規模多機能
・コロナ禍以降改善したものの再びの減少傾向
病院の経営状況は?
・医業利益率はコロナ、ウクライナ以降マイナスに、3カ年連続減少
・速報値:一般は-1.9%(改善)、精神科は-2.5%(大幅低下)、療養型は1%(維持)
・経常利益率はコロナ禍以降持ち直したもののウクライナ以降急激に低下
・速報値:一般58.3%、療養44.1%、
・同一病院比較:コロナ補助金で改善し収益低下
・黒字転化7.3%に対して赤字転落は27%、赤字継続は24%
・収益増加以上に費用が増加、従事者数増、病床減も要因
介護老人保健施設の経営状況は?
・事業利益率はコロナ補助で一時持ち直し、利用率も増加傾向
・赤字:基本型は28.5%、基本型(加算型)は35.4%、在宅強化型は31.3%、在宅強化型(超強化型)28.0%
・同一施設比較:事業利益率/経常利益率は1%前後増、赤字施設割合は10%前後増
4、令和6年度介護報酬改定の影響
・令和6年度の改定率1.59%、賃上げや光熱費増額で合計2.04%相当の改定
・活動収益減:訪問介護42.6%、小多機33.1%、通所介護31.8%、通所リハ30.9%、認知通所30.3%
・収益増減の要因:利用率の変化がほとんど
・介護職員等処遇改善加算算定状況:介護医療院はVが低い44%、算定していない12%
・今後のベースアップ予定
・特養経営状況
・強い経済を実現する総合経済対策
5、人材確保アンケート調査の概要
・回答率:介護22.5%、障害16.4%、保育32.9%
・職員の不足:介護69.0%、障害52.6%、保育47.9%
・不足への対応策:求人活動実施、業務内容見直し、時間外労働増、シフト変更
・使用媒体:介護新卒はハロワ、自社HP、学校訪問。中途は3位が人材紹介会社
・採用効果:介護新卒は学校訪問、実習受け入れ、ハロワ。中途はハロワ、紹介会社、職員紹介
・使用媒体:障害新卒はハロワ、自社HP、求人サイト。中途はハロワ、求人サイト、自社HP
・採用効果:障害新卒はハロワ、自社HP、実習受け入れ。中途は紹介会社、実習受け入れ、推薦
・使用媒体:保育新卒はハロワ、自社HP、実習受け入れ。中途は紹介会社、実習受け入れ、推薦
・採用効果:保育新卒はハロワ、自社HP、実習受け入れ。中途は紹介会社、実習受け入れ、推薦
人材紹介会社の利用は?
・とても高い、定着率は同じくらいまたは低い
・やや不満足が多い
介護助手の活用
・導入している65.9%、軽減した72.8%、質の向上37.1%(変わらない52.5%)
外国人介護人材の雇用状況
・雇用している62%、検討している68.5%
ICT機器・ロボットの導入状況
介護
・タブレット/スマホ68.7%、介護ソフト92.8%、見守り61.7%、インカム22.5%
・導入及び検討中は多くて30%、費用が高い80%、使いこなせない55.3%、維持に手間51%が理由
保育
・いずれも利用していない6%、その他5.9%
・連携しやすくなった、単純ミスが減った、精神的負担が減った、休みを取りやすくなった
・導入費用負担、詳しい職員がいない、導入に係る調整が負担
障害
・福利厚生の実施、資格取得支援
6、これからの介護・医療施設の経営
・赤字になると、資金ショート、支払いの遅れ、サービスが止まる、破産手続きへ
・医療:年間70件ペース、福祉:倒産過去最多172件、休廃業解散過去最多612件
・原因を突き止める、改善計画を立てる、資金繰り表を作成する
・経営分析、中長期の経営戦略
・やりたいサービスの提供から地域で求められるサービスの提供へ
・変化に対応できる組織の共通点:経営課題の解決に取り組む文化
とよしま代表理事からは以下の質問と意見を述べました
1、P.46病院の収益・費用の推移について
とよ:2012年以降、費用が収益を上回っており、従事者数の増加が主因とある。現場ではIT化や合理化効率化が進んでいるはずなのに何故人が増えているのか。
講師:多職種連携が推奨されており、1人の患者に多くの専門家が関わる医療に変わってきている。それが原因と考えられる。
とよ:先ごろのドラマ「19番目のカルテ」は総合診療医が主役だったように、多職種ではなく多視点になることも考えた方が良いと思う(専門視点への固執なども解決できるのでは)。
2、P.75人材紹介会社の利用について
とよ:民間介護事業推進委員会でも発言したが、年収の30%を持っていく紹介会社の利用は福祉や保育などの公金事業には見合わない。手数料に上限を設けるなどの策が必要と思う。定着率に差がない、不満足が半分以上を占める現状をどう思うか。
講師:調査をする立場なので是正はできないが厳しい現状と考える。福祉現場に沿ったルール作りが必要と思う。
とよ:最近流行りのスポットワークについても調査をして欲しい。専門性のある人が来た、門外漢で困った。両方の意見がある。
講師:スポットワークについては最近調査項目に加えることを提案したばかり。調査したいと思う。